Symphony on the radiO

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ついでにボツssです。


エンジェルハートという話で、日常にちょっくらライトノベルっぽい伝奇さを加えてみようと思ったネタです。
始めは選ばれた少年少女が天使に力を与えられて人間界では力を振るえない彼らの代理の、戦天使となって悪魔達と戦うという中二病丸出しの話でした。

ちなみにハルカくんは、父親の呪い(ってか遺言)で男として生きていかなくてはいけない宿命を背負った少女です。
これまではそんな悲しい宿世を逃れるため、心を閉ざして生活していたのですが、マコトくんに出会って心を開きかけている、というなんとも単純明快なストーリー。
勿論仲良くしているマコトくんとハルカさんをよく思わない幼馴染が偶然ハルカさんの秘密をしってしまい…なんていうシュラバにつなげようとしたんですが、見事に頓挫しましたね。見事に。

[ついでにボツssです。]の続きを読む
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  1. 2008/01/03(木) 19:42:05|
  2. 没ss
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没ネタ

 今日は、三年ぶりに彼と再会できる日。
 彼とは、ジン・タイラーのことで、我がベランディ王国の騎兵団で二十歳にして団長を務める天才剣士でもある。
 騎兵団は、騎士団の中でも花形と言われ、数々の武功や優れた軍術、豊富な経験をもつ歴戦の騎士が配属される部隊だ。そこに若干十六歳にして入隊、そして今年めでたく団長となるには並々ならぬ努力と、それに見合う才能が必要であっただろう。
 彼が団長に任ぜられたときは、わが身のように喜んだ。
 しかし、あとでゆっくり考えて、少し落胆した。只でさえ士官学校に入ったあとはなかなか会えなかった。その上責任のある地位に着いたのだ。合える時間は少なくなる一方だと感じた。
 彼は戦場に取り残された孤児だったらしい。名前以外の記憶をすべて失った彼は、三十五代騎兵団長ギルビー・タイラー卿に引き取られた。大陸には珍しい黒髪に、黒瞳、褐色の肌。もともと表情に乏しい東洋人であることに加え、強い意志と周囲への拒絶を表すかのような三白眼。誰も彼に寄り付こうとするものはいなかった。 
 私、ローゼリット=ミッシェル=リヴ=ベランディは名前の通り、この国の王女。父であるスティーヴンの年老いてからの子であることに加え、男の世継に恵まれなかったために、存外な寵愛を背負って育った。物心ついたあとは、常に周りに侍女が控えていた。
 このベランディ王国が小国であったからかもしれないが、同年代の遊び相手に恵まれたことはなかった。貴族の子弟達は急いで成人し、国を守るために騎士となっていった。

そんな中で、私が東洋人の彼と出会ったのは必然であったかもしれない。


 日差しの眩しい初夏のことだった。鮮やかな空は抜けるように蒼く、空気は思わず踊りだしたくなるほどに澄んでいた。
 いつもどおり侍女を連れて城内の庭園を散歩中だった私は、一際目を引く存在を見つけた。

 体に似合わない大きな棒をえっちらおっちら振り回し、三回に一度は体ごと地面に倒れこむ少年がそこにいた。

 侍女は、侮蔑を込めた瞳で、こう言っていた。
『あら、また汚らわしい野蛮な東夷の子が城内に紛れ込んでいますわ。タイラー卿の養子でなければすぐさま追い払ってしまいたいのに』
 
 その声が聞えたのか、黒い瞳の少年はこちらを見据えた。
 切れ長の眼窩に、三白眼。とても子供とは思えない冷えた視線だった。

『忌々しい目つき・・・・姫様、早く城内に戻りましょう。そろそろお昼寝の時間ですわ』
『あ・・・うん・・・』

 その日は侍女に連れられて部屋に戻った。しかし、私の心に少年の姿は強く焼き付いていた。同じくらいの年の男の子・・・ちょっと恐かったけど、一度話をしてみたい。素直にそう思えた。
 次の日も少年はいた。今度は少し小ぶりな棒に持ち替えている。
 訓練兵がするように、大きな木を敵に見立てて必死に棒を振り下ろしている。遠くから見た少年の瞳は、真剣だった。
 その次の日も、そのまた次の日も、少年はいた。
 彼の姿を見かけるたびに、侍女は汚く彼をののしったが、私は侍女が言うほど悪い存在にはおもえず、日増しに彼への興味はつのっていった。
 夏も半ばに差し掛かった頃、私は苦手な早起きをし、新しいドレスを侍女に選ばせ、いつもより長く鏡を見て庭園に飛び出した。
 侍女がいると彼に近づけないと思った私は、一人で彼の姿を探していた。子供には広い庭園を、ずっと探し回ったが、結局その日は見つけられなかった。
雨も降り出した。雨は夏とは思えないほどに冷たく、めかしこんだ自分を笑うように降り続いていた。服は体に張り付き、髪はびしょびしょで、体も冷えてきた。

『姫様・・・どうされたのですか?』
 座り込んで泣き出したくなった時、後ろから声がかかった。
 冷え切った体を包み込む、暖炉のような声だった。
 すぐに振り返った私は、声の主が黒髪の少年であることに安堵にも似た喜びを感じた。そのまま飛びついてしまいたかった。
『姫様、今すぐお部屋にお戻りください』
『きょうは・・・どうして来なかったの?』

 遠くで見るよりも優しい瞳。きっと普段の姿は偽りの仮面であることをすぐに見抜いた。だって、ホントに冷たい人ならば、自分の上着を脱いで雨に曝してまで私の肩に掛けてはくれないだろう。

『侍女に言われました。貴族の養子になったからって、オマエみたいなどこの馬の骨かも知れない汚い子供は姫様に姿を見せることすらも許されない、と』
『そんなことないわ・・・ずっとおしゃべりしたかったの。ずっと同じくらいの年の友達が欲しかったの・・・ねぇ、明日も来てくれるかしら?一人で遊ぶのもいいけど、わたしともお話して欲しいな』
『でも、ぼくは・・・この国の人間じゃないし、こうやってお話することだって・・・ホントは禁じられているんです』
『じゃあ、今日は何で侍女の言いつけを破ってまで来てくれたの?』
 まっすぐに少年の瞳を見て、言った。
『姫様は、いつもお庭にいらっしゃいます。もしかしたら、雨にぬれてしまわないかと・・・・ごめんなさい!!』
『あやまらないで・・・明日も来てくれる?』
『・・・・・でも・・・・ぼくなんかが・・・・・』
『いいのよ、侍女に文句を言われたら彼女を牢屋に入れるわ、それならいいでしょ?』
『い、いえ、それは姫様・・・』
『じゃあ来てくれるよね??』
 少年は困ったようにうつむくと、頬を少し赤くして、言った。
『・・・・・・・・・・はい』
『じゃあ、お名前を教えてよ!わたしはローゼリット。お父様には
ローゼって呼んでくれるから、あなたもローゼって呼んでね!!』
『いえ、しかし、それは・・・・さすがに』
『いいのよ、それよりあなたのお名前は?』
『ぼくは・・・ジンです、ジン=タイラー・・・』
『じゃあ今日からジンって呼ぶね、よろしく、ジン!!』
『あ、はい、ひめ・・・・・ローゼ様』
『ホントはローゼって呼び捨てにしてほしいんだけどなぁ~まぁいっか、じゃあまた明日も来てね、ジン!!!』

 そうして私達は知り合った。
 気づくと暗雲は去り、鮮やかな輝きと蒼穹に掛かる虹が美しかった。
 彼は人が言うよりも優しく、誠実で、とても素直だった。私以外の人間の前では、無表情という氷の仮面を被っているが、二人になるとはにかんだような笑顔も見せてくれる。そんなジンを私だけが知っていて、幼いながらもジンは私だけのものだという気分になっていた。
 二人が中庭で出会って七年ほど経った頃だろうか。
 ベランディ王国は隣のフォーン王国と戦争になった。
 もともと国力は及ばなかったが、大陸最強とまでに言われる騎兵隊の活躍により、ベランディは辛くも勝利を収めた。
 しかし、戦争が与えた衝撃と傷跡は大きく、国は疲弊し、全兵力の半数近くを失ってしまった。そのときジンの養父であったギルビー卿も戦死し、彼は取り戻した表情を次第にまた失っていった。
 そして彼の口からとんでもないことを聞いたのは、戦争が終って二ヶ月ほどした頃のことだった。
『ローゼ様、僕は騎士団に入ろうと思います。亡くなった養父や、死んでいった兵士のためにも、この国を強くしたいし、何よりローゼ様をこの手で護りたいのです』
 真剣に絵空事を語る彼の言葉。騎士団=死を連想させた当時、私の心に深い打撃を与えた。目の前が真っ暗になった。ジンが兵士になって戦争が起きたら、ラハヴ卿や城の兵士のように死んでしまうのだろうか・・・体が冷え切っていく。
 こんなに不安を感じたのはジンと初めて言葉を交わした雨の日以来かもしれない。目の奥が熱くなっていく。顎が震える、上手く言葉にできない。でも、感情の九割が悲しみと不安を告げているが、残りの一割はなぜか弾んでいた。
 ジンが、私のために、命をはって、私だけを護るために、兵士になって、私だけのために戦う・・・・・・・・
 涙は引っ込んでいた。代わりに出たのは、悦びと、笑顔。
『お願い、無茶はしないで・・・・』
 彼の胸に顔をうずめて、言った。ジンは顔を真っ赤にして頬を掻いていたが、すぐに力強く答えた。
『勿論です、僕をこの国の人間として認めてくださったローゼ様と、ベランディ王のために、我が命を懸けて、戦います』
 そのときのまなざしの輝きは、深い漆黒であったけれど、青空のように鮮やかだった。



 ジンが士官学校に入校したのは、十四歳のとき。
 ベランディ軍の規則では、士官学校は四年制であるが、彼は持ち前の才気と、血のにじむような努力を見せ付けて、僅か一年で卒業。翌年には最年少で歩兵団に所属した。
 歩兵団の中でも犯罪者や盗賊などを取り締まる部隊に配属された彼は、実地でめきめきと力をつけ、才能の片鱗を覗かせた。その後、若干十六歳にして養父の故ギルビー卿が団長を勤めていた騎兵団に栄転、その頃ちょうど始まった西方連合と中央連合との大戦争に小隊長として抜擢され、見る見るうちに戦果を挙げ、軍功と共に異人であることのハンディや世間の目をすべて実力でねじ伏せ十年戦争とも噂された泥沼の争いを西方連合随一の騎兵として、三年で勝利に導いた英雄とまでも謳われた。
 彼が士官学校に入ったあと、寂しくなかったといえばうそになる。
 でも、彼が私を護るために一生懸命勉強し、初めて見かけたときのように棒を剣に持ち替えて切磋琢磨していることを想像すると、不思議と孤独感は吹き飛んだ。それに時々演習を行幸として無理矢理見に行ったし、四将軍や父である国王に頼み込んで彼の様子を逐一報告させたり、時には自ら彼の宿舎に赴いた。
 普通の王族としてはあり得ない行動だが、初めての同年代の友達で、同時に異性であった彼に対する気持ちは、子供の感情などはとっくに超越して、もはや愛情といってもいいくらいに成長していたからだ。
 実際、部下に命令を送るジンを、剣を振り下ろすジンを、騎馬を操って演習の指揮を執る彼を見て、胸の高鳴りは抑え切れなかった。
 有事中も遠く大陸の中央で見知らぬ相手に刃を振るい、私を護るために戦う彼の姿を想像しては、ベッドの中で悶々としていた。
 会えない期間は三年ほどだっただろうか、最後に見かけた彼は十六歳。体は未だ少年の域は出ていないものの、東洋人独特の細身でしなやかな彼の姿は多感な私の心に直撃していた。少し骨ばってたくましさが出てきた横顔、切れ上がり、そのまま意志の強さを反映するかのような眉、相変わらずの他人を寄せ付けない三白眼を見て彼のことが好きだと再認識した。

 大陸を揺るがす大戦争が終って少し経った頃、大きな戦果を挙げた者の武功と栄誉を称えて、城内でパーティーと栄誉賞の授与式を行った。
 西方連合の五カ国のうち、最高の活躍を遂げたとされるジンは、全身を白銀のプレートと、騎兵の証である黄金の剣を携えて出廷した。
私の玉座の前の階段で、ジンがマスクを取ると、侍女やメイド、女兵士達はいっせいに嬌声を上げた。
 最後に見たときもずいぶんと精悍な顔つきになっていたが、三年経った後、それは見違える程にたくましく、そして鋭くなっていた。口の端を縦に走る傷跡が生々しいが、全体的に中性的な顔つきのジンにそれが箔をつけ、危険なほどの色香を漂わせている。

「ジン=タイラー。先の役では、西方連合騎兵隊突撃部隊に所属し、小隊長として二万と五百の首を挙げ、中央連合の二つの首都攻防戦にかかわり、結果陥落させたと聞いておる。見事な活躍だ」
「勿体無き御言葉」

 肩まで伸びた長髪を揺らしながら、膝をついて深々と礼をする。
 そして顔を上げた彼と、目が合った。変わらない、優しいまなざしだ。頬が紅潮する、動悸が激しくなる、長年積み上げた想いがあふれていきそう。思わず身もだえしてしまった。

「右の武功を評価し、汝をベランディ騎兵団長に任ずる」
 父上の脇に控える四将軍の一人が書状を読み上げる。すぐさま優しい表情を引っ込め、いつもの無表情を貼り付ける。
「ジン=タイラーその任謹んで拝命奉ります」

 再び深々と頭を下げた。周囲ではどよめきがもれた。
 若干十六歳にして騎兵団所属、そして歴戦の英雄にも劣らない武勲を立て、史上最年少、前代未聞の二十歳での騎兵団長就任。授与式に参加した貴族の子女達が声を上げるのにもうなずける。
 ちらりと視線を一人の子女に向けてみる。ブルネットが美しい貴婦人だ。
 すっかり目はハートマークに、散々昔はジンの出生に難癖をつけていただろうに、そんなこと無かったかのように媚びた視線を送っている。
 不必要に露出した肩、大きく開いた背中、胸のものを強調するようにコルセットで絞られたウエストが忌々しい。視線を付きのメイドに移す。
 思わず歯軋りしてしまった。こっちも完全にお熱。もはや手がつけられない状況だ。
 真逆、これ程までにジンが女性を惹きつけてしまうとは夢にも思わなかった。
 もしかしたら・・・戦争中も出征先で女性とお付き合いでも?
 あれほどまでにもてるのだ。女の一人や二人、いや、彼の優しさに触れて敵国の王女や王族を虜にしていても不思議じゃない。何故か、心が寒くなった。

「姫様?・・・・ジンに首飾りを・・・」
 いけない、妄想が爆発して顔筋が暴走するところだった。不思議そうに顔を覗き込む大臣に愛想笑いを浮かべ、完璧な笑顔を作り上げる。
「ジン=タイラー、こちらに来なさい」
 我ながら、完璧。完璧すぎるほどの笑顔、声色。媚びすぎず、高慢にもならない。本当に高貴なものだけが生まれつき持つ笑顔だ。
「はっ」

 短く返事をしてジンは玉座の下に歩み寄る。洗練された動作で膝を折り、恭しく頭を垂れた。三年ぶりの距離、私に向けてくれる言葉がうれしい。 
 先走る感情を気合で押し込み、鼈甲の皿から金細工の紋章入り首飾りをかけてやる。指先に触れる乾いた毛先と浮き上がった首の血管。このまま口付けて私のモノだと宣言して見せようか。それともジンは民衆や発情した牝犬どものために戦ったわけではく、この私、ローゼリット=ミッシェル=リヴ=ベランディのために戦ったのだと声高に演説して見せようか。どれだけ私が彼のことを愛しているか書生に書き取らせて見せようか・・・・
 
 駄目・・・最近気持ちが昂ぶりすぎて危険信号を発している。そんなことをすればジンにも迷惑なのだ。あとで部屋に呼びつけて・・・・いえ、三年ぶりなのですもの。思い出の中庭で、情熱的に愛を囁こう。

「ジン=タイラー。わがベランディ王国と親愛なる領民のため、よく戦ってくださいました。臣民とすべての王族を代表して感謝いたします。そして軍神ストラドリンの元、汝をベランディ王国軍騎兵団長に任じます」
「この矮小なる身に、余る幸せ」


 再び深く頭を垂れると、ジンは後ろに下がった。名残惜しいが、式の進行には逆らえない。
 その後の授与も滞りなく終わり、予定通りパーティーへと移行した。
 出席した若い娘達は若い騎士達と音楽にあわせて踊ったり、贅を凝らした食事に手をつけているが、ジンだけは暗い表情で一人たたずんでいた。手に持ったグラスを傾けることもせず、視線を常に空に漂わせていた。
 私はすぐさま駆け寄ると、腕を取って引き寄せた。

「ジン・・・・・・久しぶりね。ずっと会いたかったわ」

 彼の身長にあわせると見上げる形になる。でも、今はこの位置が幸せだった。
 顔はさっきあわせたが、こうやって面と向かうとまた違う。

「ひめ・・・いや、ローゼ様。お久しぶりです。こうして再び顔をあわせられるのもローゼ様のお陰です」

 いつものはにかんだ笑顔。眩しすぎる。
 私のお陰ってことは、いつも私のことを考えてくれてた、ということかしら。
あのときの言葉どおり・・・・

「ねぇ、ジン・・・・あとで中庭に来てくださらない?話したいことがあるの」
 ちょっと俯き気味に、照れたように言う。この角度がベストだと、メイド長のジャムも言っていた。

「はい・・・・私からもお話したいことがあります」

 真剣なジンの表情。もしかして・・・
 期待に胸が躍りだす。このままなら城壁から飛び降りても何とかなりそう。千の弓兵がいても単騎突入できそう。
 私は背筋を突き抜ける多幸感に甘く溺れ、この先のことなど一切考えていなかった。
 真逆だ、真逆のことが現実に起こるとは。
 未来過去今、夢に見ることなどないだろう。

 


 俺は約束の時間の十分前に、中庭の大木の元についていた。
 出征中も幾度と無く将軍には仄めかされていたが、正式に騎兵団長に任ぜられた。正直その場で飛び跳ねてガッツポーズしたかったが、冷静さを総動員して押さえ込んだ。
 姫様から首飾りをかけていただいときなど、それはもう天にも昇る思いだった。
 ずっと尊敬していた姫様、三年経っても美しさにお変わりは無くより一層磨きがかかっているご様子だった。
 腰まで伸びたプラチナブランドの髪にどんな宝石も及びつかないアイスブルーの瞳。くっきりと整った顔立ちは、意志の強さと気丈な妖艶ささえ兼ねそろえているのだ。出自の知れない異人であるこの俺が、謁見して尚且つ賛辞の言葉を頂戴するにはあまりに身分違いである。
 ましてや、ローゼと呼ぶことだって。

 姫様には養父同様、いや、それ以上に感謝している。周りの冷たい視線に耐え切れず、一人屋敷を抜け出していた俺に優しい言葉と、初めてベランディ王国の民と認めてくださった幼い姫様。
 それ以降も何度もお声を掛けてくださり、数年にわたって遊び相手をして下さった。姫様は幼年の頃は多少お転婆で、何度も俺の手を引いて城外に出たり、ひどいときは城下にまで遊びに行った。しかし城門で待ち伏せしていた侍女に見つかると、一身にその叱咤を受けてくださった。姫様は俺の二つ下だが、昔から姉のような存在であった。
 いつの頃だろうか、俺がそんな姫様を護りたいと思ったのは。
 今思えば、童心の淡い恋心だったのかもしれない。
 あまりに不釣合い、身分違いの、恋慕とも言うに足りない浅はかな慕情であった。

 戦争で両親を失い、この異人であるこの身を我が子同然に可愛がってくれた養父をなくした俺は、もう姫様しかいなかっただろうか。
 養父の弟であるアクセル卿に平身低頭して頼み込み、特例として十四歳で士官学校に入学した。俺が剣を振るうのは、すべて姫様のためであった。
 養父の恩義に報いる意味もあったが、机に向かうときも、模擬演習の時も、脳裏に映るのはいつも姫様の可憐なお姿だ。その笑顔を、優しさを、この手でも守ることができるだろうか。
 俺は死ぬ物狂いで勉強し、訓練に励んだ。昔から養父に馬術と剣術は教わっていたためか、初めに配属された歩兵団では若干物足りなさを感じてしまった。リアルな戦場で、しかも多種多様な相手に任務をこなすのはとてもよい経験になったが、本気になりきれないのもまた事実だった。
 街道に出没する盗賊団を壊滅させたあと、騎兵団への転属が発表されたときはその場にへたり込んでいた。ようやく、自分の努力が報われるときが来たのだ。
 養父の恩義に報い、現在の戦争では最も重要な機能を果たすとも言われる騎兵団。思わず徹夜で腹筋をしてしまった。翌日痛む脇腹を押さえながら、中庭に行くと、姫様がいらっしゃった。時々、行幸で演習をご覧になっていたようだがこうして間近でお会いできたのは士官学校入学以来ではないだろうか。少し憂いを帯びた姫様の美しさは、規格外だった。
 しかし、俺は同時に感じたのだ。
 この想いは、感情は、恋などという下賎なものではないと。
 この想いは、姫様が下さったすべての温情に対する感謝と、憧れなのだと。
 そのときすべてを理解した。
 俺は、姫様と、ベランディ王国のために、全身全霊をかけて尽くそうと。
 往年の考えに思いをめぐらせていると、姫様がいらっしゃった。
 先のパーティーとはまた違う、高級感とご自身の美しさを引き立てるシンプルなドレスにお着替えになっていた。

「待たせたかしら、ジン」
「いえ、姫様。わたしも今参上したところです」

 腰を折って礼をする。顔にかかる前髪がうざったい。
 姫様は少し残念そうなお顔をされた。俺はこの表情に弱いのだ。何も考えられなくなってしまう。

「二人だけのときは、ローゼって呼んでよ・・・・」
「それはもうできません。わたしは一介の騎士。姫様は直にベランディ王国を背負って立たれるお方です。出自の知れない、野蛮な騎士風情が気安く呼んでよいお名前ではございません」

 まっすぐに姫様の瞳を見据える。少し、姫様は震えておられた。

「今日は冷え込みます、これをどうぞ」
 肩のマントを外して、姫様の御肩に掛けて差し上げる。行軍用の分厚い革のマンとではなく、儀礼用の清潔なものである。
「ジン、貴方はやっぱり変わっていないのね。いつも優しいわ。でも不安になってしまうの。貴方の優しさが、そこらの薄汚い牝犬に向けられると思うと・・・・」
「はぁ・・・・・・・左様でございますか・・・」
 どうやら姫様はお疲れのご様子だった。御言葉のうちに若干不穏な響きが含まれている。
「だからね、そろそろ・・・・・・・・・あの、その・・・・」
「はい」
「いいわ・・・・・・・貴方も話があるのでしょう?先に言いなさい」

 暫く口ごもる姫様。頬を真っ赤にされている。やはりお疲れの様子。
 早く用件を申し上げてしまおう。


「姫様、実はわたし、ジン=タイラーは来月婚約いたします」
 少しの沈黙の後、

 姫様の美しい面が凄絶に歪んだ。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/08/06(日) 12:50:22|
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スウィッチブレイド・ナイフ・・・完結
Pet☆Hot☆High-School!・・・完結
向日葵・・・完結

Pet☆Hot☆High-School!と向日葵についてはまとめサイトの偉大なる管理者でおられる阿修羅様にいただいたタイトルです。

尚、『スウィッチブレイド・ナイフ』『向日葵』につきましては、有難い他者様のプロットを使って書き上げた作品です。
この場を借りてお礼申し上げます。










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